編集後記

 ふだんどおりに朝をむかえ、日常の仕事とともに1日をすごし、穏やかに夜を迎える。日々を重ねるなかで季節はめぐり、身近に移ろう四季の彩りを愛でながら1年をすごすーー今年ほど、こうしたふだんどおりの暮らしができることが、ほんとうに幸せなことだと感じた年はないでしょう。あまりにもいろいろなことが、私たちのまわりに起こりました。
 写真家という仕事も、世のなかの出来事や人びとの思いと無関係ではいられません。私自身、創っていきたいと思う作品のありようが大きく変わりはじめたのも、むしろ自然なことといえるのかもしれません。
 と同時に、今年自分に何ができるかを問いかけた写真家も少なくないでしょう。自らがこうあってほしいと願う社会や環境のありかたにむけて、何がしかの力になりうる創作活動をめざしたいと、誰しも思うものです。相手が動物であれ人物であれ、「撮る」ことは「ともに生きる」ことにほかならないのですから。         

 こうした思いから、「世界のネイチャーフォトグラフィーNature Photo Annual 2012」は、1日の流れ、季節の流れを大きな柱に構成することしました。編集作業を進めるなかで、皆さんからお送りいただいた作品に見る、春に咲く花やさえずる小鳥たちの姿に、秋に山じゅうを赤く染める紅葉のさまに、自分がどれだけ慰められ元気づけられたかを、改めて強く感じました。
 親子の絆や動物たちの安らぎの表情にも、いつも以上に強く惹かれました。掲載された写真が、撮影した写真家の技術や思いとはちがう形ではあっても、読者の方がたの心をひとときでも慰めるものであるなら、それだけで本書にとって幸せなことです。
 この編集方針のために、せっかく多くの写真家のかたがたからお送りいただきながら、構成のなかに組みこめず、断腸の思いで掲載をあきらめざるを得なかった秀作も数多くありました。そうした作品をお送りいただいた皆さまには、深くお詫び申しあげます。とともに、今後も継続してご参加いただけますよう、お願い申し上げます。
 最後に、今回ご参加いただきましたすべての写真家のかたがたに厚くお礼を申し上げます。  
              水口博也